就労移行支援とは、障害者総合支援法に基づき、障がいや精神疾患を持つ人が就労を目指すために支援する制度のことです。企業・公的機関などと労働契約を結ぶことを希望する方に向けて、就労に必要な知識やコミュニケーション能力、ビジネスマナーなど多様な訓練を提供します。障がいのタイプやレベルに応じた配慮を受けられる点が特徴です。
職業訓練とは、就職に向けた知識やスキルの習得を目指す公的制度で、「公的職業訓練(ハロートレーニング)」といいます。障害を持つ・持たないに関わらず誰でも利用できるのが特徴です。基本的には無料で利用が可能。希望する職種に沿った専門的な知識や技術を、週5日通うことで集中的に学べます。
就労移行支援施設と職業訓練の大きな違いは、障がい者を対象にしているかどうかという点です。
就労移行支援施設は、身体的障がいや精神疾患を持つ人のみを対象にしていますが、職業訓練は障害を持つ人・持たない人に関わらず訓練が受けられます。
また通所する日数についても、職業訓練の場合は週5日通わなければいけませんが、就労移行支援施設の場合は週1日~2日程度、ひとりひとりの体調や障がいの程度に合わせて利用できるという特徴があります。
訓練する内容も異なります。職業訓練は就職希望者の望む職種の知識・技術の習得を目指して集中的に学ぶことが目的ですが、就労移行支援の場合、社会に出て働くという基本的な部分からスタート。自己の健康や日常生活の管理、コミュニケーションスキルの向上、ビジネスマナーの習得などから始め、適正に合う職業訓練へと移行します。
職業訓練の利用料は、テキスト代を除き無料で通所可能です。就労移行支援は前年度の年収によって一部負担するケースがあるものの、生活保護受給世帯や所得の低い世帯の方は無料で利用可能です。
就労移行支援 | 職業訓練 | |
---|---|---|
特徴 | 障害者支援法に基づく制度 | 就職に向けて知能・技能を習得する公的機関 |
期間 | 原則2年 | 約3~12ヶ月 |
対象者 | 休職中の障害者 | 求職者・在職者 |
障がいへの配慮 | あり | なし |
診断書 | 必要(意見書でも可) | 必要なし |
利用料 | 前年度収入によって異なる | 無料 |
交通費負担 | 自治体によって異なる | 通所手当あり |
申請手続き | 役所の福祉課に申請 | ハローワークに申請 |
就労移行支援と職業訓練は「就労を目指す」という目的は同じであるものの、対象者や習得する内容が異なります。障がいを持っていて今まで一度も働いたことがない方や、体力や日常生活の改善から始めたい方には、就労移行支援がおすすめです。その一方で「すでに社会経験があり、より専門的な知識や技術を身に付けて再就職を目指したい」というケースであれば、職業訓練のほうが向いていると考えられます。
どちらの施設を選んでよいか悩んでいる人は、実際に公的機関へ相談してみることも選択肢に入れてみると良いでしょう。